
近年、特に過疎化と高齢化が進む地方において「負動産」が急増しています。不動産を相続する担い手が不足し、相続放棄によって放置される物件が増加。これがさらなる負動産化を招く悪循環となっています。
「負」とされる最大の理由は、流動性を失い売却が困難なうえ、管理義務とリスクが所有者にのしかかる点です。不動産所有者には善管注意義務が課され、事故や行政からの指導にも対応せねばならず、固定資産税だけ払えば済むわけではありません。建物があれば火災や不法侵入、山林なら災害や不法投棄など、様々なリスクとコストが発生します。
これに対し、令和5年4月に施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続や遺贈で得た不動産で不要なものを国が引き取る制度ですが、実際には厳しい条件が課されており、実効性には疑問が残ります。制度の狙いは所有者不明土地の拡大を防ぐことにありますが、行政にそのリスクを積極的に負うつもりが無いことは、透けて見えます。なぜなら条件を満たすような土地ならば、この制度を利用しなくても一般の流通市場で売却できるのではないかと考えるからです。
さらに、不動産の価値は都市計画法による区域指定にも大きく左右され、市街化調整区域や無指定、農地法にかかるもの、また市街化区域内であっても都市近郊でない農地などは、実質的に負動産化しているのが現状です。日本国土にある全ての不動産は細分化(分筆)されており、土地開発や政策には各所有者の同意が必要となり調整が難しく、さらに相続を経て所有者が増えるなどしていれば、ますます管理不全に陥りやすくなっています。
早晩、これら負動産の合計は北海道の面積にも匹敵する規模に達するでしょう。
地価と建築コストの上昇を招く現在でも、タワーマンションを建築販売するデベロッパーはそのコスト高を販売価格に反映させていますが、今後は国内だけの販売戦略では限界があると見ており、中国、台湾など広く世界の富裕層を対象にしてグローバル化を図っていくようです。
一方、現下の不動産業界の状況は、長年の低金利を背景に資産価値を高めてきましたが、いよいよ2025年に入り金利上昇が始まり、資金調達コストの増加が企業を圧迫し始めています。当面はマネーサプライの引締めは緩やかですので過去の蓄えで乗り切れるとしても、単純な転売型ビジネスモデルは厳しくなっていくのではないでしょうか。
不動産業界が青信号から黄信号へと変わった今、広く経済の成長となる社会全体への貢献やイノベーション創出が求められる局面に入ったといえるでしょう。
「負動産の世界」と、方や「タワマン億ションの世界」の二極化。
この資本主義世界の包摂を未来のAIに問えば、さて、返答は何と・・・。