所有不動産の価値は資産から負債へ・・・?
元来、財産といえば先ず不動産と預貯金高を思い浮かべる人が多いことでしょう。
大金持ちと言えば多くの不動産を所有している人であって、その不動産自体の資産価値が疑いを持たれることはありませんでした。
しかし、この価値が今後も維持されるかどうか筆者は疑問を持つところであり、もしかすると、令和の時代は「不動産」が「負動産」と一文字を変えてしまう、「別れ道」となる時代なのかも知れません。
日本中の土地価格は、国土交通省、国税庁、都道府県市町村が一応の“目安価格”というものを付けています。
その“目安価格”を基にして固定資産税額や相続税額を算出していますが、実際に不動産市場で取引される価格(時価)とは相違しています。
それは当然のことで、一般経済で、物の価格は需給のバランスによって決まるものです。
しかし不動産取引においては、前述の“目安価格”を相場とする枠から取引価格の設定がはみ出ると、官僚統制が仕掛けた網にはまることになります。
高額すぎると「国土法の届出」という規制がかかり、逆に低額すぎると税法上の「低廉譲渡問題」に引っかかってしまいます。
実際に価格が0円でも引き取り手がないような地方にある不動産でも、役所が出した“目安価格”で「評価価格」を算出することができますし、固定資産税額も計算できます。
この「評価価格」は不動産鑑定士が公的評価を行ったものですが、その金額は決して0円ではありません。
そもそも、「不動産は価値があり、また所有することで財産になる」という発想のもとで日本国の法体系が出来上がってしまっているので、価値0円、ましてやマイナス評価価格となると、あらゆるところで矛盾が噴き出してきます。
それでも、金融の世界では既にマイナス金利が到来して金融機関などは厳しい環境に置かれています。
不動産取引市場で取引するプレイヤーにもここ10年来で大きな変化があります。基本的に今の不動産売買市場は、「投資物件として価値があるかどうか」の基準でしか取引されていません。
この日本もかつて30~40年ほど前には「1億総不動産屋」と言われる時代がありました。
土地は必ず値上がりするという神話のもと、国中の人が不動産投資に走っていました。事実、不動産価格の値上がりは続き、東京23区を合わせた土地価格の合計金額でアメリカ全土が買えると言い、日本全体が浮かれていた時代もありました。しかし、その後の崩壊は、皆様ご存知の通りです。
土地を所有していれば、隣地の所有者や新たな道路計画など、いつかは誰かが買いに来てくれるとだろうと思うでしょう。しかしその夢は叶いません。
消滅都市などに名前が上がっている人口減の地域では、行政による街のコンパクト化が行われています。道路、上下水道などのインフラの合理化縮小をして財政負担の軽減を目指しており新たに土地や道路を必要としません。
現代の住居として求める一次取得者の要望は、駅近く、広めというより合理的でコンパクトな住宅を求める傾向にあるようです。
郊外の既存住宅地にも変化が表れ、ドーナツ型現象などによる人口の集約化とライフライン縮小による財政負担軽減化の推進など不動産所有の必要性が減ってきます。
ここで、特に問題にしておきたいことは、これからは不動産所有に係る責務(維持管理債務)が所有者に大きく問われてくる時代に入るということです。
何か予期せぬ天災地変や事故事変が起こると、所有者の善管注意義務など何らかの責任追及を受けるリスクがあります。
不動産は前述の様に「そこから収益を生まないもの」は買い手が付きません。自分に必要な不動産は既に持っていますし、今後の人口動向から予測すれば、不動産はまだまだ余ってきます。
固定資産税の基準となる三年一度の評価替えは来年、令和3年度です。評価額を決める固定資産税評価員に税収確保のノルマがあるとは思いませんが、評価額が下がって不動産所有者の税負担が軽くなるようなことは期待できず、足かせは締まるばかりです。
利益が得られる収益不動産は別にして、利用価値が低く管理責任を問われるだけの不動産所有は、「負動産・・・売れない、貸せない、棄てられない」にあたります。
私たちは、この激動の時代、いち早く皆さまの資産の現在のリアルな姿を示して、すばやい対応・行動に移すお手伝いをさせていただきます。「不動産」が「負動産」となる前に少しでも早く手を打っていきましょう!!