負動産と災害ハザードマップ

もう随分前のことでありますが、北九州のある場所で土地の地盤沈下(陥没)があり怪我人が出るという事故が続いて発生しました。原因は炭鉱(ボタ山)の坑道跡で、同等の危険性をもつ地域が多くあることを行政側は知っていましたが、それ以上は公表しませんでした。理由は単純です。周辺の土地価格に影響することや、地域の発展を望む地元財界の公表反対であり、さらには、行政さえも人の命より経済の発展を優先した体制であったからです。
それが今ようやく、日本経済発展により先ず人の命が優先されるようになり、危険な箇所が開示される方向に動き、ハザードマップというものが公開されるようになりました。

とは言っても、このハザードマップは本来自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で作成されるものですが、言い換えると、自然災害で人の命や財産に被害が及んだ場合に、その原因追求を求める国民から行政側が責任逃れをするために作成されたとも言えます。国土地理院はハザードマップを作成するために必要な日本国土全体の測量情報を昨日今日に知った訳ではありません。ここ一、二年でようやく情報開示されてきましたが、もっと以前に国民に知らさなければならない情報です。

さて、都道府県市町村の地方自治体はその災害が予想される区域を決定しハザードマップにして公表しますが、事前の公示はありません。ある日突然に、赤色や黄色に塗られた地図が公表され、土砂災害、水害等の被害が大きい地域をそれぞれ色分けして示されます。
災害予想する地域には警戒するものとして他にも津波、液状化等もあり、地震に関する断層帯などの情報も示されています。

そんな中、もし自分の所有不動産に色が塗られていればどうでしょう。これらは自然災害を想定したものですから個人の力で防ぎようのないものですが、一旦警戒地域に指定されれば客観的にみて不動産の価値は下がらざるを得ません。
不動産評価や利用価値が下がるだろうからといって、役所が進んで固定資産税を減額はしてくれません。
また、一方では不動産所有に係る管理者義務という責任も付いてくるので、結局プラス面は何もなく、知ることの権利の主張はその利益とは反対に作用して、私有財産の負動産化に繋がるかもことにもなります。

しかし、ハザードマップ公開は政府として当然の責務でありますので、不動産所有者はその影響も考慮して立ち回らなければならない時代になってきているのです。