「境界」と「負動産」

土地には当然「境界」があります。ここからここまでと決まられた範囲を区切り一つの土地と見なします。
境界の区切りは様々で、たとえば広い野球グラウンドのような土地でも、そのもの全体で一筆になっているものもあれば公図上ではいくつもの筆数に分かれているものもあります。ただし、中には境界があいまいで、非常に扱いにくい土地もあります。

負動産? 境界が明らかでない土地

具体的には次のようなものになります。

  • *境界標の設置(隣接の所有者との合意に基づくものに限る)がなされていないことにより他の土地との境界を認識することができない土地
  • *土地使用収益権(地上権、賃借権)が設定されている範囲が明確でない土地

土地取引では、この境界問題ほど難しくやっかいなことはありません。
土地謄本に地積(公募面積)の記載がありますが、これはあくまでも目安でありその面積が事実上のものであることを国が保証している訳ではありません。
ですから、確実な面積を得ようとするなら測量するしかないのです。

最近の取引は、隣地所有者との立合いをもとに作成された確定測量図の面積で行うのが一般的であり、公募面積によるものは少なくなってきています。

この境界問題が難しくやっかいであるのは次のような理由からです。
先ず、隣地所有者の合意を得るためにはその所有者を調べなければなりません。そこに住居があれば、「・・・さん、こんにちは」と訪ねていけばいいわけですが、空き地の場合は公図(地籍図)から隣地を調べ、その謄本を請求し所有者を探し出します。
しかし、そこに記載されている所有者はあくまで謄本上のものであり、現在の真の所有者とは限りません。これがやっかいなのです。

たとえば、隣地所有者が既に死亡している場合など、様々なケースがあります。相続登記がなされていなかったり、登記されていても相続人が複数名であるとか、本人が認知症で後見人がついている、また外国に住居を移しているとかで連絡を取ること自体が大変というもの。隣地所有者だからと言って勝手に他人の住民票や戸籍謄本をあげることはできませんし、現場での立合いもこちらが巻尺やテープで測る訳にもいかないので、それぞれに司法書士なり測量士の先生に依頼して連携して行うわけですが、これには当然のこと費用が掛かります。

さらに隣地所有者の所在が判明しない場合に、公示送達の手続きを以て確認を取るなどすると、これも弁護士費用が掛かります。
そうなってくると費用対効果を考えざるを得ず「もう、止めておこう」と相成ります。

そして、苦労の末に隣地所有者が判明し、「お手数をおかけします」と頭を下げてようやく現場まで来てもらったとしても、その当人も境界が分からなくて困ることが多く、これまたやっかいです。

土地所有が民間同士である場合は、得てして、立合いをお願いした方が相手方に譲歩した形で解決することが多くなりがちです。
なぜなら、隣地境界確定は互いに有用で必要なことではありますが、ただ相手方は今すぐに決めて「判」を押す義務はありません。「判」を押して欲しいとお願いをしているのはこちらだからです。決して、立合った測量士が決めるわけではありません。

このように境界問題の解決には費用が掛かります。
費用対効果を考えれば、不動産から「負動産」になってしまうこともあります。

「負動産」化しそう、またはこれって「負動産」かどうかを判定して欲しいといったご相談はぜひ弊社まで。皆さまの資産のリアルな状況をお伝えします。