最近マスコミで、所有者が判明しない土地の総面積は九州を大きく上回ると取り上げられる機会が多くなりました。
先ずそのこと自体にも驚きますが、登記簿所有者に課税するという台帳課税主義から、
土地所有者が判明しないのであれば固定資産税が徴収できず、その未収額は相当額にのぼるのではないかと考えられます。
固定資産税は土地の評価額から課税標準額を求め、さらに税率を乗じて決定されます。
毎年1月1日の所有者(登記簿に記載された者)に納税義務があります。
(土地は固定資産税評価額が30万円未満のものは非課税)
しかし、固定資産税は地方財政を支える重要な柱であると言われるにもかかわらず、徴収の少なさから財政難に陥り大変であるという声は不思議と聞こえてきません。
それは、いくら九州ほどの面積があっても所有者不明土地そのものの固定資産税評価額が低く、そこから徴収できる固定資産税が僅かなものであるためでしょう。
この所有者不明土地問題は、税収の問題ではなく違うところにありそうです。
ここで「負動産」の三要素である、『売れない・貸せない・棄てられない』の話です。
先ず1、「売れない」は、これは単純明快で不動産そのものに資産と呼べる価値がないからです。不動産を購入する人にはそれぞれの目的があります。先ず隣地との境界は定まっており、交通の便や環境が良いから住居としての利用を考える人、近隣に土地開発の計画や道路計画があるなどで地価の値上がりを期待して投資のために購入する人など、それぞれ利用価値、資産価値を判断して対価を払います。
しかし、人口減で過疎化した地域や、人口の都市集中で後に取り残された地域などにはいずれも妙味がなく、買主はあらわれません。
2、「貸せない」は、その土地を有効利用できる様態にどんなものが考えられるかですが、
接道条件が整っていないと利用できる人は隣地の人に限られますし、また、借り手があったとしても隣地境界明示は最低限必要でしょうし、その手続きの煩雑さや、かかる費用の大きさ(貸主も借主も)から借り手が現れることを期待するのは現実的ではありません。
3、「棄てられない」このことが一番大きな問題で、どんな形であれ一度不動産所有権を取得(登記簿に記載)すると放棄する手立てはありません。
不動産の移転(寄附など)には必ず相手方が必要ですし承諾も必要です。
このように、自分の意思だけでは棄てられないので、負担となる固定資産税と不動産の管理義務という足かせも外せません。
九州の面積程ある所有者不明土地には、この「負動産」が随分潜んでいるように思えます。
今後も増加の一途をたどる「負動産」。私たちはこの「負動産」問題に真正面から取組んでいきます。